Web3.0という言葉を耳にする機会が増えるにつれ、分散型SNSという新しいインターネットサービスが注目を集めています。
従来のSNSとは異なり、ユーザーが自分のデータを管理しプラットフォームに依存しないという特徴を持つ次世代の仕組みです。
これまでのSNSは便利で使いやすい一方、企業がデータを一元管理しているため、アカウント停止や情報の取り扱いといった不安を抱く方も多くいました。
分散型SNSはこうした課題を改善し、より自由でユーザー主体のSNS体験を実現しようとする取り組みです。
Web3.0とはどのような考え方なのか
Web3.0は、ブロックチェーン技術を活用して実現する「分散型のインターネット」を指します。
従来のWeb2.0では、SNSや検索エンジンなどの大手企業が情報を管理し、ユーザーのデータは企業のサーバーに保存されていました。
一方でWeb3.0では、ユーザーが自らデータを所有し、どのサービスでも自由に持ち運べるという考え方が広がっています。これにより、データの管理や価値のやり取りがすべてユーザー主導で行える新しいインターネット社会が目指されています。
Web2.0との決定的な違い
Web2.0では便利さと引き換えに、サービス提供企業によるデータの集中管理という問題がありました。たとえばSNSアカウントが突然凍結される、投稿が理由なく削除される、個人情報が流出するといったことが起こり得ます。Web3.0ではデータがブロックチェーンに分散して保存されるため、特定の企業がすべてを管理する状況がなくなり、ユーザーの権利がより強く守られるのです。
分散型SNSとはどのような仕組みなのか
分散型SNSとは、ブロックチェーンや分散型ネットワークを利用して構築されたSNSの総称です。最大の特徴は、データの所有権が企業ではなくユーザーにあるという点です。従来のSNSの場合、投稿内容やプロフィール情報はサービス企業のサーバーに保管されています。しかし分散型SNSではそのすべてが自分のウォレットやブロックチェーン上に保管され、利用者自身が管理します。
ユーザーがデータの鍵を管理する仕組み
分散型SNSでは、ユーザーが秘密鍵と呼ばれるデータ管理の鍵を持ちます。この鍵を使うことで、自分のプロフィール、フォロワー、投稿内容を自由に扱うことができ、別のアプリにそのまま移行することも可能です。つまり、SNSごとにアカウントを作り直す必要がなく、自分のデータをそのまま持ち運べるという革新的な仕組みが実現します。
検閲に強く自由度の高い環境が実現
中央の管理者が存在しないため、特定の会社の判断によってアカウントが削除されるといったことが起こりにくくなります。もちろん、どんな投稿でも許されるわけではなく、各コミュニティによってガイドラインやルールが設定されています。しかし、従来よりも透明性の高い仕組みで運用されるため、不当な規制がかかりにくい自由度の高いSNSが実現されています。
いま注目されている分散型SNSの例
分散型SNSは世界中で開発が進んでおり、既に多くのサービスが公開されています。ここでは代表的なものをいくつかご紹介します。
Mastodon（マストドン）
マストドンは最も知られている分散型SNSの一つで、多くの利用者が参加しています。
特徴は、ユーザーが「インスタンス」と呼ばれるサーバーを選び、それぞれが独自のルールで運営されている点です。インスタンス同士がつながり合うことで、一つの巨大なネットワークが形成されています。
Lens Protocol（レンズプロトコル）
Lens Protocolは、Web3.0の仕組みを活かし、ユーザーのデータをNFTとしてブロックチェーンに保存するSNSプロトコルです。
投稿やプロフィールの情報をそのまま別のアプリに移動できるため、ユーザーはどのアプリを使っても同じアカウントで活動できます。これにより、サービス側ではなくユーザー主体のSNS体験が可能になります。
Farcaster（ファーキャスター）
Farcasterでは、ユーザーIDをブロックチェーンに記録することで、分散型でありながら使いやすいSNSを実現しています。アプリとしての操作性も高く、Web3初心者でも扱いやすいことから人気が高まっています。
分散型SNSのメリット
分散型SNSが注目されている理由には、従来型SNSにはない魅力が多数存在します。ここではその主なメリットについて解説します。
データを自由に管理できる安心感
ユーザーがデータの所有者であるため、企業側の都合でアカウントが失われる心配がありません。自分のデータを自由に扱えるという安心感が、分散型SNSの大きな魅力です。
アカウント凍結の不安が少ない
従来のSNSのように、理由が分からないままアカウントが停止されるといったトラブルが起こりにくい仕組みです。これはクリエイターにとって大きなメリットであり、長年築いてきたフォロワーや投稿を失うリスクが減ります。
収益化の手段が増える
投稿をNFT化して販売したり、独自のトークンを使ってファンと交流したりするなど、新しい収益化の形が生まれています。これにより、クリエイターやインフルエンサーはプラットフォームに依存しない新しい活動の場を持つことができます。
分散型SNSのデメリットや今後の課題
メリットが多い一方で、分散型SNSはまだ発展途上であり、課題も存在します。これらの課題を理解することで、Web3.0サービスの全体像をより深く知ることができます。
利用者がまだ少なくコミュニティが小さい
大手SNSと比べると利用者数は少なく、投稿量も限られているため、情報を得にくい場合があります。今後の普及によって改善される可能性は高いものの、現時点では小規模なコミュニティが中心となっています。
操作に慣れるまで時間がかかることがある
ウォレットの管理や鍵の保存など、Web3特有の操作に不慣れな初心者にとってはハードルが高く感じられる場合があります。ただし、開発が進むにつれてユーザーインターフェースは改善されており、今後はより扱いやすいサービスが増えることが期待されています。
Web3.0時代における分散型SNSの未来
分散型SNSは、ユーザーが自分のデータを自由に管理するというWeb3.0の理念を具現化したサービスです。
現時点では発展途中ですが、世界中の開発者や企業が本格的に参加し始めているため、今後数年で大きな進化を遂げる可能性があります。
特に、クリエイターの収益化やビジネス活用の面では、従来のSNS以上の可能性が広がっています。
これからの時代は、ユーザー主体のインターネット環境がさらに強まると考えられます。自身のデータを大切にしたい方や、新しいSNSの形を体験してみたい方にとって、分散型SNSは非常に魅力的な選択肢となるでしょう。
